先日、信濃美術館での企画展
「ひろしま美術館コレクション〜印象派の巨匠達とピカソ〜」展
を見て来て以来、小さな絵画の一枚が頭から離れない。
いや正確に言うとその一枚を見たことで引き出されたその人の作品群が頭から離れない。
印象派の巨匠でもピカソでもなく、
母校の先輩にあたる人なのだが・・・。
鴨居玲(1928〜1985)
学生時代に石川県立美術館で大きな回顧展があり、
それを見た衝撃を思い出した。
あのころ、美術なんてホントに何も知らなくて(今も知らないけど)
だけどなぜか美大には受かっていて
まわりには小さいころから美術の道をめざしていたヤツらがいて
その頃の僕から見ると才能にあふれた友人達がいて
ほんとに美術のなんたるか、何故作らねばならないか
自分はなにを作るのか、作りたいのか、まったくわからなくて・・・。
あの頃見た衝撃はもちろんその鴨居玲の絵の才能に対してということもあるが
その破滅へと向かう世界観ではなかっただろうか。
内側に孕む狂気、襲いかかる孤独、死への渇望、生き続けることの恐怖
そしてそれらすべてをどうしようもなく求めてしまう欲情に近い感覚
いまでこそなんとか言葉に多少は置き換えることができる。
その破滅へと向かう世界観にシンクロしてしまう自分の存在を肯定できる。
作るということが破滅へと導くこともあるのだと理解できる。
あのころはただモヤモヤしていた。
想いの吐き出し方がわからなくて、もどかしくて苦しかった。
今、自分の作るべき物が目の前にあり、作りたいものが少し前に見えている。
モヤモヤしていたものはあるエッジを持って形作られている。
僕の作るものは僕を破滅へとは導かないだろう。
しかしその世界を憧れてしまう抗いがたい欲望というものも実感できる。
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