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はじまりのかたち 金沢市民芸術村(金沢市) 2008年

 

 

その昔、地球は真っ赤な火の玉でした。

どろどろに融けた金属の塊だったのです。

金属にはその頃の記憶が宿っているでしょうか。

融けた金属によって作り出されるはじまりのかたち。

 

 

 

 

 

 

「日本人の土人」

 

 学生時代の角居君を知っている。金沢美大の鋳金の工房で課題に追われながら、なにを表現して良いのか、迷いに迷っていた頃である。ちょうどその頃彼の習作が目に留まり私はその小品を買っている。鑞型鋳造のえたいの知れないその小品は、今も大事に手元に置いてある。当時の彼はスポーツに、玄人芸人顔負けのパフォーマンスにと八面六臂の活動をしていた。その旺盛な行動力は卒業後も続いたが、数年間の彷徨の後再び鋳金の仕事に集中しだした。それは溶融したアルミニゥムを土間にぶちまけただけの物体であった。地球の生成の原初を想起させるような異様な作品であった。素材そのものが自らあるがままの形を形成したとも見て取れる表現は、素材が本来持っているDNAと作り手の角居君のDNAが衝突して生まれた独創的な作品であった。

 現代文明の進展は、人がかつて持っていた身体感覚を蝕み鈍化させているように思えてならない。古来「人は土から生まれ、土に返る」と言われている。人のDNAには人が地上に出現したときの記憶が記録されているに違いない。角居君のDNAには格別濃厚にインプットされているのかもしれない。現代人がいつのまにか失ってしまった潜在的能力を持つ角居君の独壇場はまだまだ広がる気配である。かつて私は彼に「日本人の土人」と称したことがある。今もその印象は微塵も崩れてはいない。

 

            陶造形家  金沢美術工芸大学 学長  久世建二